パウロの森の四季 2018年

 

●2018年5月19日(土)定例作業

モミジイチゴ

 イチゴといえば春にはクサイチゴ、冬にはフユイチゴ、ミヤマフユイチゴが目を楽しませてくれる。暑くなるとエビガライチゴだってできる。でも何といっても味が良くてたくさん成るのはモミジイチゴなのだ。そしてこれだけ橙色だ。パウロにもたくさん成って、もいで帰りジャムにする人もいる。パウロでは少ないおいしい食用の実だ。

アメリカフウロ

 この果実の形、見たことあるだろうか?そう、ゲンノショウコ、別名ミコシグサと同じなのだ。同じフウロソウ属だ。黒い小さな5つの犬のフグリみたいなのが種で、その真中で伸びる棒が5分裂してバネのように種を飛ばす。その後の姿がミコシのようだと、・・。葉っぱはゲンノショウコとかなり違う。パウロでは第2広場に咲いている。

カラスノエンドウ

 ほとんど雑草といわれる野草で普段は注目を浴びることもない花だ。仲間にスズメノエンドウがあって、さらにこの二つの中間にカスマグサがある。豆果はインゲンマメのような形で、豆科の場合はみな「豆」のような果実ができる。熟すと黒くなるので「カラス」と呼ばれる。

●2018年8月1日(水)定例作業

ハエドクソウ

 この野草の根っこを煎じて、昔使われたハエトリ紙が作られたので、この名前がついたのだとか。2枚の葉が交互に十字対生で生じるのでわかりやすい。花は上から咲き始め、つぼみは上向き、咲く時は水平、咲き終わると下にお辞儀する。なかなかきれいに咲いているものには会えないが、実はきれいな花で名前が気の毒だと思う。咲き終わったら、ありがとうございました、とばかりにお辞儀するなど律儀な花ではないか。

ミミガタテンナンショウ

 パウロの森に自生するテンナンショウ属の花は、ミミガタテンナンショウとホソバテンナンショウではないかと思うのだがどうだろう。ここでは有名な性転換の話は書かない。まだ早いと思うのだが、雌株はこうして実が熟すと赤くなる。誰に食べて欲しいのかいついまでも赤いのだ。大菩薩嶺に行くと、10月頃はミミガタテンナンショウの赤い実ばかり目立つのだが、あれを見るとやはり鳥に食べて欲しいのだと思う。しかし、大菩薩でもパウロでも赤い実は頭を下げて地面にボトリと落ちるようである。それで比較的、群生するように思う。

カシワバハグマ

 ○○ハグマと名前のつくものがいくつかある。それらはみな右の写真のようなつぼみであって、白い仏具のような花を咲かせるのだが、個人的にはキッコウハグマが群を抜いて美しいと思う。カシワバハグマは葉がカシワの葉に似ているのでその名前がついたようだが、どう見てもカシワに似ているとは思えない。花は、むしろ花後の花冠の状態がいつまでも残り美しい。また、比較的群生しやすいように思う。美人薄命ではないが、キッコウハグマのきれいな花にはなかなか会えないし、またその寿命も短いのである。もちろん、パウロの森にはない。残念だ。

●2018年9月5日(水)定例作業

シラヤマギク

 秋になるとキク科の白い花が咲く。代表選手はシロヨメナだったり、ユウガギクだったりするのだが、このシラヤマギクも有望選手だ。

 

 シラヤマギクは頭花がまとまって咲くのが特徴で、葉も下部の方では心形になるので判別できる。花の数で勝負するのがこの花の特徴か。

 

ノブキ

 野に咲くフキのノブキである。この花は観察する時期が違うと同じものとは思えない。最初は5mmほどの頭花に白い粒が密集している。その内、中央部の白い部分が咲き始める。追って周囲に8個ばかり放射状に花が咲く。中央の多数のツブツブは、両性花で実ができない。周囲の8個にのみ果実ができるのだ。まず、中央部が枯れ、それから周囲も花の時期が終わり、柱頭が膨らんで鬼の金棒のような長い実ができる。

 

ガンクビソウ

 正しくは(キバナガンクビソウ)だろう。黄色いすぼまった花が咲く。開平しない。キセルのガンクビに似ているのでガンクビソウといわれる。花自体はヤブタバコ、コヤブタバコの方がずっときれいだ。他にもオオガンクビソウがあって、さながらミニヒマワリのようだ。

 

 

 

オヤマボクチ

 花としてはまだまだ早い。丸いトゲトゲの茶色い花が咲く、目立つが地味だ。種はそれでいいのだが、オヤマボクチの本領は葉裏にある。葉の裏は真っ白で、つまりは白い毛が密生している。檜原村では、オヤマボクチをネンネンボウといい、ネンネンボウのが葉裏の毛をつなぎに使った蕎麦を売りにしているそば屋がある。実はその店でももう出してなくて、檜原村でも食べることができない、残念だ。

 

ビナンカズラ

 パウロ学園に来る大久保バス停横の民家にビナンカズラがある。ちょうど黄色い花が咲いている。ビナンカズラは雄花と雌花があって、どちらも花の中央に集合果のような雌しべができるのだが、あのツブツブの実ができるのは雌花だけなのだ。この写真も中央の子房のふくらみ方から判断すると雌花だろう。ついででだが、ビナンカズラから作る整髪料は、ビナンカズラのツルから作られる。実から作るのではない。


●2018年10月20日(土)定例作業

オトコヨウゾメ

 秋から初冬にかけて赤い実をつける樹木、花は多い。なぜ赤いのかというと鳥に目立つためらしい。白い実というのはほとんどなく、今思いつくのはフッキソウくらいのものだ。

 赤い実といえば、大菩薩に行くと目立つにはマユミの実、ナナカマドの実、そしてミミガタテンナンショウの実なのだ。ミミガタテンナンショウはなぜか鳥はなかなか食べないようだ。

 オトコヨウゾメは実が下がってついている。それで口の悪い人は「オトコヨウナシ」といって、覚えるようだ。

ノハラアザミ

 葉っぱを見るとノアザミかノハラアザミで時期から考えて、ノハラアザミだろう。ノアザミは夏前に咲く。ある先輩は、「ノハラナツコ」がスナックにいてね、と覚えていた。夏以降に咲くのはノハラアザミなのだ。その先輩、アズマヤマアザミとタイアザミは、「アズマクビナシ、タイアルタイ」と九州弁で覚えていたが、さて意味がわかるだろうか。右の写真で、白くて長いのは雄しべで、雄しべの中からピンクの雌しべが押し出してくる。キク科の共通の仕組みだ。

シロヨメナ

 ヨメナとは、「嫁のように優しい」という意味があるそうだ。花だけ見ていると優しそうな花だが、葉は鋸歯が大きく深い。似た花にシラヤマギクとユウガギクがある。どれも似ているが、シラヤマギクは頭花が多く、下部の葉の心部がハート型だ。ユウガギクは上部の葉が細く、下部の葉には浅い鋸歯がある。一番後にノコンギクが出てくる。

カシワバハグマ

 葉がカシワの葉に似ているハグマで、カシワバハグマという。ハグマというのは漢字で白熊と書く。戊辰戦争、官軍は江戸幕府が大量に保管していた江戸城のヤクの尾の毛を官軍幹部の識別に使ったのだが、白は薩摩藩だった。これをハグマといった。長いのは雄しべでその中から雌しべが出てくる、先頭は2裂する。もう花の時期は終わって、パウロでも咲いているのは数株しかない。笹尾根の大羽根山山頂付近には大量に咲く場所がある。

ガマズミ

 ガマズミには他にコバノガマズミ、ミヤマガマズキがある。ヤブデマリ、ムシカリも仲間である。葉が丸くて大きくとガマズミかムシカリだが、葉の縁と葉脈が異なる。赤い実が上を向いて大きな葉の裏に隠れるので写真は撮りにくい。6号路と5号路の合流点にガマズミ属の木があって、コバノガマズミだいや、ミヤマガマズミだと議論があったが今ではコバノガマズミで定着している。パウロではパウロ広場周辺に数株ある。

アザマヤマアザミ

 先に書いた「アズマクビナシ、タイアルタイ」によるとアザマヤマアザミである。総苞に太く尖った針がない。アズマヤマアザミもタイアザミ(トネアザミ)も同じ時期に咲く。したがって、観察会の参加者に聞かれる機会も多いのできちんと勉強しなければと思うのだが、いかんせんあまり興味のわかない花ではあるのだ。

 

 

 

 

サラシナショウマとアサギマダラ

 今年はずいぶんアサギマダラを見たように思う。パウロでも多かった。この日は午後3時頃に第2広場の脇のサラシナショウマに止まっているアサギマダラを目にした。近寄っても全く逃げない。アサギマダラはヒヨドリバナなどに止まるがサラシナショウマに止まっているのを見かけたのは初めてだった。サラシナショウマもやっと見かける時期になった。

 

 

 

 

 

 

ビナンカズラ

 先日書いた民家のビナンカズラである。雌雄異株で雄花も雌花も同じような花を咲かせるのだが、当然、雌花の方にしか実はできない。小さい時は凸凹のある粒々が押しあってくっついたような実だが、次第次第に大きくなって、赤い実がくっつきあったような実になる。よく誤解されるが、整髪剤に使われるのは実ではなくて、ツルだそうだ。切り刻んで水につけておくだけでいいそうだ。


●2018年12月5日定例作業

 

ヤマホロシ

 山ではこの時期、赤い実が目につくが、ヤマホロシ、マルバノホロシが多いだろうか。里の付近ではヒヨドリジョウゴ、ハダカホオズキだろうか。いずれもナス科で似たような花を咲かせ、実をつける。果柄が実につく部分が微妙に異なり、それがまた面白い。

 

 

ヤブコウジ

 パウロ広場周辺のヤブコウジには先日来、小さな赤い実が目につきだした。5日にはやっと大きくなった。ヤブコウジは10両であって実も少ない。江戸時代、斑入りのヤブコウジは高値で売買されて、それで、落語「ジュゲム」にも登場する。幸運を呼び込む植物とされた。この辺りはわたしは冬の植物観察で困ったときに使うネタである。

 

 

フユイチゴ

 この時期の赤い実の定番だ。葉の先が尖っていたら、ミヤマフユイチゴ、尖ってなかったらフユイチゴ。イチゴだから集合果だ。食べると美味しい。パウロではおいしくても小学生には勧めるわけにはいかない。今の時期、あちことに見られるが、日影沢などではもう枯れてきているようだ。

 

 

ヤブムラサキ

 もう時期的に少し元気のないヤブムラサキだ。大久保バス停からパウロに来る途中の民家で見られるコムラサキも見られなくなったので、そういう時期なのだろう。ムラサキシキブ同様、きれいな紫が美しい。サワフタギなどの紫色は、ラピズラズリといってちょっと色合いが違うようだ。ご存じのようにヤブムラサキの葉の表面はスベスベしており、毛があるのだ。葉を触りながら歩くのも楽しい。