日照時間の少ない長い梅雨がようやく終わりを迎えたが、盛夏が訪れた初日の朝はどんよりと曇っていた。コロナウイルスの感染拡大の状況下であったにも関わらず、キャンセルされた方は少なく、38名16家族(大人18名、子供20名)が参加された。
高尾駅北口のバス停で参加者の受付をすませ、陣馬高原下行のバスに乗車した。パウロ学園の最寄りにある大久保駅で下車すると参加者、スタッフ全員が手指の消毒を済ませた。自動車で来られたご家族と合流し、学園内にある芝生広場に集合し開会式を行った。
まず幹事から挨拶があり、当日のスケジュールやコロナウイルス対策について話をした。また、安全担当からスズメバチに遭遇したときの対処方法やツタウルシに触れたり近づいてはいけないことを、大きな写真を用いて注意換気を促した。体操を終えた後、参加者は、大人用と子供用のヘルメットを被り、班ごとに十分な距離をとりながら、東尾根へ出発した。
午前中初のプログラムは、東尾根を歩きながら、森の昆虫探しと観察をした。子供達は、班長から山道の路傍に生えている植生の話を聞くと目を輝かせはしゃいでいた。ヤブムラサキのふわふわした葉の感触を楽しみ、スノキの実を美味しそうに食べ、イノシシが木を擦った跡に好奇心の眼差しを向け、樹液を吸う昆虫を見つけて、網ですくって虫カゴに入れて楽しんでいた。日常とは異なる森の世界へ誘われ、親子で新しい発見を満喫していた。
昆虫探しを楽しんだ後、森の広場で竹の材料を用いた水鉄砲作りをした。予め各班毎に設置されたテーブルには、水鉄砲サイズの竹桿やスポンジや布など製作に必要な材料と用具を準備した。班長が作り方の見本を見せると、親御さんも子供達も、製作にとりかかった。楽しみながら共同作業で親子の会話も弾んだようだった。
最初に出来上がった水鉄砲を試しに撃ってみるが、押し出し棒を引くと押し出し棒側から水が出てしまったり、噴射口からはあまり勢いよく飛ばなかったり、ちょうど良いという按配がなかなか難しいようだ。それでも、押し出し棒の太さを調整するなどして工夫を重ねていくうちに、水が遠くに飛ぶようになってきた。密集を避けるために各班は順番に、アマビエのイラストや紙コップの的をめがけて水鉄砲を楽しんだ。水と戯れることが子供達の何よりの喜びのようだった。
昼食の時間に、希望者を募って藍の叩き染めを楽しんだ。白い生地に、好みに葉をレウトして、木槌で叩くと、葉の模様が浮き上がってくる。天日干しにして並んだ天然のアート作品の製作は、子供達だけではなく、お母さん達にも人気があったようだ。
午後は、竹の材料を用いてカエルのバッヂとロウソク立てを作った。竹の枝の節を用いたカエルの顔に、子供達はマーカーで好みの色を塗り、カラフルなカエルの顔に仕上げていた。先端をななめ切りにした竹桿に、小刀を使って面どりをした。刃物を使う子供達の顔つきは、かなり真剣だった。ドリルで班長に穴を開けてもらい、マーカーで表面に好きなデザインをして、オリジナルなローソク立て作りを楽しんでいた。
まとめで幹事が今回、自然遊びの素材として大いに活躍した竹について力強いメッセージを披露した。お題目は、「たけのせいちょう」だ。タケノコの先端に、帽子をかけておくと一日で手の届かないところに伸びてしまうほど成長が早い、節と節の間がのびて成長する。言葉だけでは伝えづらい竹の成長を重ねた紙コップを蛇腹のように広げて表現したり、タケノコの中身を可視化したイラストと風情溢れる竹桿の水墨画を用いた粋な演出に釘付けになり、親御さんも子供達も幹事の話を熱心に聞いていた。
プログラムの最後に、各班毎に、子供達から一人一人の感想を話してもらえたが、楽しく自然の中で遊べたようで満足感溢れる表情をしていた。コロナ禍で、ご家族の多くが外遊びや行楽地に行くことに神経を使わなければならない状況だったろう。その中で、お申込みをいただいきパウロの森まで足を運んでいただいたご家族には感謝の気持ちでいっぱいだ。参加されたご家族が思い出を分かちあえ、何よりも子供達が自然と触れあうことで、今後自然と親しみをより持てるお手伝いができたとしたら嬉しい限りだ。帰りの引率をしていると、久しぶりにヒグラシの合唱を聞いた。突き刺すような暑さと盛夏の青空が戻ってきた。高尾駅で見送った自然の中で遊んだ親子の軽やかな足取りから「夏が来た!」という心踊るような思いが湧き上ってきた。